動物愛護管理法(数値規制):猫の帝王切開と周辺に起こっている問題

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

動物愛護管理法と動物取扱業に関心のある人たちが政治家や環境省に要望している中で、犬猫の帝王切開の回数を決めるというものがありました。
また犬猫の帝王切開を獣医師以外の人間、獣医師資格を持たないブリーダーが行っているなどの噂が流れており、環境省はエビデンスがないにもかかわらずこの疑念について「帝王切開は獣医師しか行えない」などの規制の文言を規制案に記載するに至りました。
獣医師以外の人間が犬猫の帝王切開を行えるのかどうかをかかりつけの獣医師に尋ねてみましたが、麻酔薬の譲渡は罪が重いのでないだろうとの前提で、無麻酔で手術をすることはできないとの返答でした。どこからこの噂が出たのか分かりませんが、帝王切開は手術の上手な獣医師と下手な獣医師の施術でかなりの技術差がありますので、もしかしたらそのせいかも知れないと考えているところです。

誤解のないよう、まずは当キャッテリーにおける帝王切開に対する考え方、過去の事実を説明いたします。
ロシアンブルーは基本的に帝王切開を必要としない猫が多く、過去に経験した帝王切開の数は多くありません。うちは年に平均10匹程度しかブリーディングしていない小規模なキャッテリーなので参考になるか分かりませんが、25年の間に4回の帝王切開を経験しました。もちろん全て動物病院で獣医師に施術していただいています。4回のうち2回は同じ猫でしたが、私は同じ猫で2回の帝王切開があった場合には体質だと思って避妊手術し、引退させるポリシーです。
以上の事実と考え方を踏まえた上で、この先をお読みください。

一部の愛護活動をされているグループの方々が、帝王切開の回数を1回にして欲しいとの要望を環境省に出されています。(3回との要望に変更されていましたが、基本的にブリーダーの元での帝王切開は悪だという考えのようです。)
帝王切開が必要になるケースですが、その母猫の体質による場合、また子猫が子宮の中で弱っていたり亡くなった場合など、様々なケースがあると思います。また猫種犬種によっては必ず帝王切開が必要になるものもあるようです。これに関してはその種の生存権を奪うものでもあり、まだ自分の中で結論が出ておりません。肯定も否定も難しく思います。
帝王切開は基本的には母猫と子猫を守る手術で、悪の手術ではありません。お産はいつ何があるか予測がつきません。万が一の時に選択肢として用意しておくべきものです。
少なくとも私が育てているロシアンブルーに関しては、母猫の体質的問題で帝王切開を繰り返した場合には引退させるのが正解だと思います。アメリカのロシアンブルーのトップブリーダーたちも2度目で避妊手術する場合が多いです。
1回目が子猫側の問題である場合は次のお産から上手くいくケースもありますが、1回しか帝王切開ができない場合にはそういったケースでも、万が一の時のバックアップ(帝王切開)がないのでお産を諦めなければならなくなります。1回の規制は極端ではないでしょうか。

そもそも私のような小規模で趣味としてお金をかけてブリーディングをしているブリーダーだけでなく、どのブリーダーも帝王切開をしたい訳ではないと思います。
営利目的の業者の立場から考えても、帝王切開は歓迎できる選択肢ではありません。まず手術代が高いこと、母猫の回復に時間がかかること、帝王切開後に母乳を吸わせるのは苦労が多いことなどが挙げられます。
では帝王切開以外にどんな選択肢があるのか・・・それは陣痛促進剤です。陣痛が弱い、来ないなどの理由から陣痛促進剤を投与することがあります。1度の投与で生まれれば良いですが、生まれない場合は2回目を投与するか、もしくは帝王切開を選択することになります。

これは営利目的で猫の繁殖を始めたとあるブリーダーAの話です。
Aは母猫に動物病院で1度目の陣痛促進剤を打った後子猫が生まれず、再び動物病院に向かいました。獣医師は帝王切開が必要との診断をしましたが、Aはその猫に何らかの理由で帝王切開を受けさせたくなかったため(恐らく金銭的な理由だと想像します)、知り合いを頼りました。知り合いは営利目的で猫を繁殖している業者で、獣医師でもないのに何故か陣痛促進剤を持っていました。Aはその陣痛促進剤を分けてもらい、獣医師の同意なく母猫に2度目の陣痛促進剤を打ちました。
結果として、子猫のほとんどが死にました。母猫は無事でしたが、過剰な陣痛促進剤の投与は子宮の破裂などのリスクを伴います。許されることではありません。

帝王切開の過剰な制限は、このようなケースを増やすことにはならないでしょうか?
帝王切開に関わる周辺の問題として、私は動物を愛する皆さんに考えていただきたいです。

私は猫がお産をして子猫を育てることは不幸だとは思いません。もちろんブリーダーが正しい知識を持ち、良いケア・環境を与え、万が一の時には帝王切開などの選択肢も持ち、きちんとバックアップをしてあげられるなら、ですが。
愛護活動をされている方全てがそうとは思いませんが、多くの方がブリーダーのもとでの出産は全て不幸だと思われているようで、とても悲しく感じます。

もし繁殖を引退した猫のコンディションが悪かったとしたら、それは単純にお産をさせたかどうかではなく、きちんとしたケアと飼育が行われていないからです。父猫も同じで、適切な方法による交配が理由で健康状態が悪くなる訳ではありません。※過剰な回数のお産(猫だと年に3度以上など)、ひっきりなしの交配はコンディション悪化の理由になると思います。
大切なことなのでもう1度、もしそういった猫がいるなら、ブリーダーの元でのお産・交配が悪なのではなく、ブリーダーの飼育方法とケア、繁殖の方法に問題があるのです。全てのブリーダーがそんなことをしている事実はありません。
私はそういったことをする劣悪な業者との付き合いも、かかわりもありません。
我が家の現役の猫たちは不幸ではないし、コンディションにも気を配って大切に育てていますから、一括りにして欲しくありません。
酷いブリーダーの存在に憤るのはわかりますが、猫を大事にしているブリーダーのことも思いやっていただけないものでしょうか。

関連記事

  1. 元気過ぎて・・・
  2. 生後52日。
  3. 最後の集合写真
  4. CFA Yearbook(年鑑)用の共同広告 Wynterwyn…
  5. 子猫誕生
  6. はじめての
  7. 初めまして&お久しぶりです
  8. 特注キャットツリーが来たよ!

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  
PAGE TOP